弁護士三浦のコラム

2015.10.14更新

   その女性の広大なお屋敷は、壊れた玄関を一歩はいると、足の踏み場もないほどのゴミがあふれかえっていた。土間にうずたかく積まれたゴミのなかには、枯れた花束と一緒に骨壺が3個無造作に転がっている。その女性の母と兄弟2人の骨が入っている骨壺である。
 この女性の成年後見人に就任以来、この骨壺の処理は気になっていたのだが、このたびようやく、資産管理体制も整ったので、3個の骨壺をお寺にお納めすることにした。それに伴い、墓地の状況を確認したら、先代まで土葬だったので、骨壺を納めるスペースがないから掘り起こして新たに造らなくてはならないとか、先祖代々の墓と親族の墓の墓碑銘が違っているとか、いろいろな事実が判明したので、この際、お金をかけてすべてきれいに整理することとした。
 お墓の整備も済み、納骨の日程が決まったその日に何が起こったか・・・・・
 なんと、その女性が脳内出血をおこして意識を失い、救急車で病院に運ばれてしまったのである。甥から連絡を受けたが、私は出張先であり、いかんとも動けない。幸い、命に関わるほどのことではないとのことだったので対応を甥と病院に任せ、倒れてから2日後に病院に出向いた。
 看護士に案内された救急病棟のベッドの上には、白髪で色白の女性が上半身をおこしてうつむいてじっといた。

 「○○○さん」と声をかけると、その女性は、顔を上げてほほえみながら私の方を見てこう言った。「ああ、先生、ありがとうございます。こんなことになってしまって申し訳ありません。」

  「えっ・・・」私は、その場に立ちすくんだ。両腕に鳥肌がたっているのがわかった。

 私が知るその女性は、統合失調症の影響だと思うが、いつもいきり立った眼をしており、私を見ても、挨拶などしたこともなく、唐突に壁のシミを指差して、「これが殺された兄の血の跡である」と言ったり、「殺されるので自宅には帰らない」「ここにいれば光の戦士が守ってくれる」というような会話しかしなかった女性であった。まともな会話のキャッチボールはできない人だったのである。しかし、今私の目の前にいる女性は、ほほえみながら、世話になった医師看護士にお礼をいう、穏やかな女性に変身していたのである。普通に会話はつながり、意味不明の登場人物はでてこない。
 
 画像診断の結果、CT上は血が減っていることが確認でき、血圧も下がっているので自宅療養でよいという医師の判断で退院することとなった。退院した日は、午前中お寺で納骨をした日であった。

こんなことってあるんだろうか?
墓の整備や納骨と脳出血の時期が重なったのは偶然なのかもしれない。また統合失調症の人が脳内出血を起こすと劇的改善をするのかどうか私には医学的なことはわからない。ただとにかく、長年統合失調症を患っていた彼女が劇的に変わったのは事実である。
「憑きものがとれた」とはこんなことをいうのだろう。信じられない経験をした。

投稿者: 弁護士 三浦 修

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